「本気」の約束

創られたものの形としての美しさには、時と空間を超えて人を動かす力がある。初対面の人でも、何の前置きもなく、いきなり心を鷲づかみにする魔力がある。作品の「見方」や理屈がわからない人も思わず振り向かせるカリスマがある。

だから、ものづくりには、技を磨き、形としての完成度を高めることも大切だ。

でも、ものづくりでの価値は形の完成度だけでは語れない。特にパフォーマンスについては。

そこでは、形としての完璧さよりも、その人の心がどれだけ宿っているか、その人の本気がぶつけられているかが、人々を動かし、かけがえのない価値を生む。形の完璧さばかりを追い求め、突き詰めると創るというプロセスそのものから意識が剥がれてしまい、心が入っていないカラになってしまうことさえある。

そのことが、セス・ゴディン (Seth Godin) のブログで非常にうまく語られていた:

もし、「生み出せる最高のもの」を求められたら、たぶん、今までに創ったことがあるもの、やったことがあるもの(例えば先週創ったものと同じもの)を見せようと思うだろう。「最高のもの」を求めるということは、以前すでにやったことを繰り返してやることを求めていることなのだ。

しかし、もし人が求めているものが、その時その場にいる「あなた自身」だったら、完璧じゃない。完璧ではあり得ない。あなたが生み出すものはただ以前とは別のもので、その場で創られた生のものであるというだけ。

人に向き合ったその場その場で出来ることは、あなたの本気を見せ、火を付け、大きく跳躍すること。本気で身体を張りながら、同時に完璧であることはできない。
本当の価値を生む人たち(アーティスト)に対してファンやお客さんが求めるのは「最高」や「完璧」ではなく、「本気」なのだ。

ジャズの演奏に「最高」や「完璧」は言えない。だからこそ面白い。
If someone wants your very best version, that probably means that they’re going to get the same version that you’ve done before, the same as the best version you produced a week ago. If you want the best, it also means that you’re asking someone to repeat what’s come before.

On the other hand, if they want you, right here and right now, it won’t be perfect. It can’t be. It will merely be different and real and in the moment.
The opportunity in any given moment is to share your truth, to light a spark and to leap. But you can’t do that at the same time you’re being perfect.
Artists end up with clients, customers and supporters that don’t demand the best. They merely demand the truth.
There is no best jazz performance. That’s why it’s interesting.

 

「本気」の約束と「本気」への期待・信頼でつながる関係を増やして、その中で生きていけたら本望だな。

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