「残った言葉」カテゴリーアーカイブ

大学改革の行く末

あまり簡単にもうダメだとかは言いたくはないですが、今の大学を取り巻く「改革」にはかなり根本的な疑問を持たざるを得ません。内田樹さんのこの記事(「国立大学改革亡国論「文系学部廃止」は天下の愚策」)、長いですが、大学の側から見た光景が非常に正確に捉えられていると思います。

内田さんも言っているように、国立大学にも問題は少なくなかったが、昨今のコロコロ変わりつつどんどん強引になっていく文科省からの「改革」を見ていると、国立大学という仕組みや文科省主導の教育制度は近いうちに機能不全に陥るだろうと思います。少なくとも、自分が命を懸けるような教育の場ではなくなります(今でもほとんどそうではなくなっています)。

実業界からすれば、時代錯誤とか社会の実情やニーズから乖離しているなどと見えるのでしょうが、社会のすべてが今の経済活動に最適化されるべきだと考えること自体が危険だということに気がつかないのでしょうか。それとも、大学での教育や研究も経済活動に最適化して実業界での即戦力だけを育てることを求めなくてはならないと思うほど、実業界はじり貧で余裕がなくなっていると言うことことなんでしょうか。

どちらにしても、大学での教育・研究環境の破壊はものすごいスピードで進んでいます。この記事の最後で内田さんが指摘しているように、あるべき教育を考える場は私塾しかないかなと僕も思っていて、大学の枠を離れた教育活動の道を真剣に考え、模索しています。

[読] Creativity, Inc. (ピクサー流 創造するちから)

Creativity, Inc.: Overcoming the Unseen Forces That Stand in the Way of True Inspiration

『ピクサー流 創造するちから』

John Lasseter と共にPixarを作り引っ張ってきた Ed Catmull が書いた本。

常に観る人の想定を越えて、アッと言わせる作品を生み出し続ける共同的創造作業の現場をどのように作り、維持してきたのか、その苦労を、これまでの作品作りの舞台裏を明かしながら、自らの経験として語っている。Pixarの映画作りの歴史の本としても楽しめる。

この本を読むと、Pixarのマジックは決してただの幸運などではなく、身と心を削る苦労の賜物だということがよく分かる。

Pixarの活発な創造空間を維持しているものは簡単なスローガンなどには決してまとめられるものではないが、すべての人を生かし切る、率直に建設的に意見を言い合う信頼関係を保つ、積極的にリスクを冒せる安心を保つ、環境や関係の変化に対応して常に柔軟に考え動く、などの指針が心に残った。

日本語版を読み始めたが、誤訳や分かりにくいところが多々あったので、英語版を買い直して読んだ。英語版の文章はとてもよく書かれていて読みやすく、感動的。日本語翻訳もがんばってはいるが、原書の魅力が十分訳し切れていないのが何とも残念。

 

[読]「経営者を支え、起業家を育てる」

小出宗昭(富士市産業支援センター長):経営者を支え、起業家育てる:朝日新聞デジタル(フロントランナー) (2014.5.10)

【メモ】

・売上げを伸ばす方法は3つ:販路拡大、新分野進出、新商品・サービス開発

・起業をめざす人への有効なアドバイスは3つ:真のセールスポイントを生かす;ターゲットを絞る;必要な人や企業をつなげる

ひと生かし、能力生かし、地域おこし

・起業家に限らず、地域で働くあらゆる人の「挑戦」を応援して地域にたくさんのチャレンジャーが生まれれば、地域は元気になる。テーマは「チャレンジャー大量排出作戦」

・コーディネーターに必要な素質:高いビジネスセンス;コミュニケーション力;情熱(覚悟をもってとことん向き合う)

・相談に来る人は、人生を懸けてやってくる。だからこちらも命がけ

・(企業支援事業)の成功はコーディネーターにかかっています。「一生懸命やっています」なんて意味がない。求められているのは結果のみ。地域に支持されたかどうかの指標となる来場相談件数の公表は必須です。

・もちろんすべてがうまくいくわけではありません。成果が出るのは7割ほど。でも、失敗してもまた次がある。もう一度チャレンジすればいいのです。僕らの提案はコストをかけません。だから何度でもチャレンジできるのです。

・どんな企業にも必ず、オンリーワンがある。それを見いだして、応援するのが僕たちの仕事

人には必ず生かされるべきものがある

[読]『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』

自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 (朝日新書)

下園壮太 朝日新聞出版

これはタイトル的に本屋で目にしてもまず手に取ろうと思わない本だけれども、割とよく読んでいるブログで取り上げられていてちょっと引っかかりがあったので読んでみた。

特に気になったのが以下の引用:

なぜかイライラしているし、仕事に意欲を持てなくなってしまった。

このようなケースは、表面的には「生きがい」の問題のように見える。

しかし、多くのクライアント(相談者)を支えてきた私には、生きがいの裏に潜むエネルギー問題が見えてしまう。エネルギーの使いすぎ、つまりムリな状態を続けたことで、気力が低下し、生きがい問題として表れているケースが非常に多いのだ。

読み終えての感想は、読んで良かった。

自分の経験からなんとなく持つようになった感覚が明確に意識されるようになった。

うまく集中できない。気力がない。いいアイデアが浮かばない。明るい展望が開けない。めざすべき将来像が見えない。といった「スランプ」に陥ることが僕にはすくなくない。

そんな時、以前は、どうして自分の創造力はそんなにショボいのか、気力が弱いのか、見方が後ろ向きなのか、などとよく自分に詰問していた。でも、いくら自分に詰め寄って叱咤しても気分が腐るだけなので、あるときからそれをやめることにした。何となく自分を甘やかすようで抵抗もあったが、自分で自分を潰してもしょうがないと思うに至った。「自分」は他の人と差し替えられないし、どんなにダメなやつでもこの人にがんばってもらわなくてはならない。だったら、ダメなやつでもダメなりの最大のパフォーマンスを引き出せるように応援した方がいいと思ったから。

そう思うようになってからは、集中できない、気力がない、いいアイデアが浮かばない時も、まあそれは一時的で、元気が出てくれば自然とうまくいくようになるさと思える余裕が少し出てきた。そうやって大きく構えていると、実際に元気になった翌日には不思議なくらいアイデアが出たりした。そんな小さな成功体験を通して、「スランプ」も一時的なもので、疲れているのが原因だろうと思うようになってきていた。

なので、この本で言われていることはすごくしっくりきた。

集中できない、気力がない、アイデアが浮かばない、将来展望が見えない〜こうしたことは「生きがい」や「性格」や「世界観」などといった哲学的、精神論的問題と考えがち(本人も周りも)。でも、それは単に気力・体力的に限界に来ていることが原因であることが意外と多い。

「生きがいがないから、意欲がなく、だから元気がない」よりも「疲れているから、意欲がなくなり、だから生きがいなど見えようもない」状況になってしまっている。問題は一時的な疲れから来ていて、生きがいや性格や能力自体の問題とは違う。それがわかればやるべきことははっきりする(休むこと)し、気力が低下していることそのものに悩んでさらに気力が低下するという悪循環に陥ることもない。

ちょうど極度に疲労していて気力がどん底になっていた時に読んでいたのでありがたかった。

おすすめです。